「大手のM&A仲介会社に問い合わせたら、体よく断られた」「最低手数料を聞いて諦めた」——譲渡対価が数千万円クラスの、いわゆる小規模M&Aでは、これが日常的に起こっています。しかし、断られたのは会社に価値がないからではありません。仲介会社側の料金体系に合わなかっただけです。この記事では、その構造と、小規模案件の現実的な進め方を解説します。

「小規模」とはどのくらいの規模か

この記事でいう小規模M&Aとは、譲渡対価がおおむね数百万円〜1億円未満の案件を指します。年商で言えば数千万円〜数億円、従業員数名〜20名程度の会社です。日本の企業の大多数はこの規模に属し、後継者不在の問題が最も深刻なのもこの層です。つまり小規模M&Aは例外的な話ではなく、日本の事業承継の本丸なのです。

なぜ断られるのか——最低報酬という構造問題

M&A仲介の成功報酬はレーマン方式(取引金額に段階的な料率を掛ける方式)で計算されますが、ほとんどの会社が最低報酬を設定しています。大手仲介では2,000万〜2,500万円が一般的な水準です。

譲渡対価3,000万円の案件を考えてみてください。手数料が2,000万円なら、売り手の手取りは税引き前で1,000万円。これでは売り手が納得できるはずがなく、案件として成立しません。だから大手は、丁寧な言い回しで小規模案件を辞退します。「弊社では十分なご支援が難しく…」の裏にあるのは、価値の否定ではなく、料金体系のミスマッチです。

一人の担当者が動くコストは案件の大小であまり変わらないため、大手が高い最低報酬を設定すること自体には合理性があります。問題は、その構造を知らずに「うちの会社は売れないんだ」と誤解して廃業へ向かってしまう経営者が少なくないことです。

断られた後の選択肢は3つある

選択肢①:小規模案件に対応する仲介会社・専門家に依頼する。最低報酬を低く設定し、小規模案件を正面から受ける事務所は存在します。当社もそのひとつで、最低報酬は500万円(税別)、移動総資産ベースのレーマン方式(5億円以下の部分5%〜)で算定しています。手数料の仕組み全般はM&A仲介手数料の相場で解説しています。

選択肢②:M&Aマッチングサイトを使う。インターネット上で売り案件を登録し、買い手と直接やり取りするプラットフォームです。手数料が低い(または売り手無料の)ことが利点ですが、交渉・契約・価格算定を自分で担う負担と、匿名掲載でも情報が推測されるリスクがあります。交渉経験のない売り手が単独で使うには、正直ハードルが高い選択肢です。

選択肢③:顧問税理士など身近な士業に相談する。顧問先のネットワークから買い手が見つかることもあります。ただし、士業側にM&Aの実務経験がない場合、価格交渉や契約実務で行き詰まることがあるため、M&A実務の専門家と組んで進める形が現実的です。

小規模案件の依頼先を見極める4つの質問

依頼先の候補には、次の4つを聞いてみてください。①最低報酬はいくらか、算定基礎は何か(書面で即答できない相手は避ける)。②同規模の成約経験があるか(小規模案件は大型案件と買い手層も進め方も違います)。③着手金・中間金の扱いはどうか(破談時に何が残るかの確認)。④契約前にガイドラインに沿った説明があるか(中小M&Aガイドラインは、手数料・専任条項・テール条項の事前説明を求めています)。

4つとも明快に答える相手なら、規模の大小にかかわらず信頼に値します。

スモールM&A市場は「売り手不足」である

もうひとつ、知っておいてほしい市場の実態があります。小規模案件の世界は、買い手に対して売り手が足りていません。

背景には、独立・起業の手段として「ゼロから起業するより、既にある事業を買う」という選択が定着してきたことがあります。会社員が退職金や貯蓄で数百万〜数千万円の事業を買う、地方の中小企業が人材と顧客を求めて同業を買う——こうした買い手の裾野は年々広がっています。一方の売り手は、「うちみたいな会社は売れない」という思い込みと、大手に断られた経験から、市場に出てくる前に廃業してしまう。結果として、良質な小規模案件は慢性的に品薄です。

つまり、譲渡対価数千万円クラスの会社は「売れない」のではなく、「正しい棚に並べば競争が起こる」規模なのです。必要なのは、その棚——小規模案件を扱う専門家とマッチングの経路——にたどり着くことだけです。

小規模だからこその強みもある

悲観する必要はありません。小規模案件には固有の強みがあります。買い手候補の裾野が広いこと——数千万円の投資額なら、同業の中小企業だけでなく、個人の起業家や異業種の参入組まで買い手になり得ます。意思決定が速いこと——株主が社長一人なら、交渉は驚くほどスムーズに進みます。

手数料以外に見るべき「サポートの範囲」

小規模案件では、手数料の安さだけで依頼先を選ぶと失敗することがあります。確認すべきは、その手数料で「どこまでやってくれるか」です。

具体的には、企業概要書の作成を誰がやるのか(売り手任せの会社もあります)、買い手候補への打診は何社くらい行うのか、条件交渉の場に同席するのか、基本合意書や最終契約書のドラフトを用意するのか、デューデリジェンス対応の伴走はあるのか。小規模案件は売り手側に経験者がいないのが普通なので、この伴走の厚さが成約率を直接左右します。

安くても「場の提供だけ」なら自力交渉と大差なく、多少高くても一気通貫の伴走があれば結果的に安い——手数料は金額ではなく、サポート範囲との比率で評価してください。

まとめ——断られたことと、売れないことは別

大手に断られた小規模案件は、日本の事業承継の空白地帯です。しかしそこには、会社を必要とする買い手と、それを繋げる専門家が確かに存在します。「断られた」を終点にせず、規模に合った依頼先を探すこと。それだけで、廃業以外の道が開けます。

当社の場合、譲渡対価数千万円クラスの案件でも、企業概要書の作成から買い手打診、交渉同席、契約書ドラフト、デューデリジェンス対応まで、大型案件と同じ一気通貫の伴走で承ります。「この規模で相談していいのだろうか」というためらいこそ、最初に捨てていただきたいものです。

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